【特集】令和元年度卒業生 三田が丘賞 受賞者インタビュー2

2020.02.27 学園通信

(令和元年度卒業生 三田が丘賞 受賞者インタビュー1から続く)

 

学会発表でゴールドポスター賞を受賞

予期せぬ実験結果に、研究の醍醐味を知った

いろんなことを学んだのですね。次に、高3になってからの「探究コースN」について聞かせてください。

崎本 僕は魚が好きで、家でも水槽で魚を飼っています。水中には排泄物が排出されますが、そこに含まれるアンモニアには有毒性があるので、これを分解して窒素にできないか…そんなことを以前から考えていました。そんな折り、SEEDSプログラムの1回目の講義で東京理科大の先生のお話を聴きました。そのなかで、セルロースの分解の話が出たのですが、これが強い刺激になり、後にSEEDSプログラムでの自分の研究テーマに繋がりました。

「探究コースN」へ進む際の研究計画書は、そんな経緯を経て書いたのですね。具体的にはどんな研究なのか、簡単に教えてください。

崎本 アンモニアを酸化して硝酸にするのは簡単ですが、さらに硝酸から窒素へ還元する際には「脱窒菌」という微生物を用います。還元過程なので通常は嫌気条件下で用いますが、僕は脱窒菌が窒素を生成する際に使用する酵素に着目しました。そして、それを精製し、バイオリアクターとして利用しよう。脱窒菌の酵素を用いた効率のよい窒素除去法をつくり出そう。ということを研究の目的にしました。僕の思いつきから生まれた研究でしたが、考えに不足している部分はお世話になった先生方からアドバイスをいただきました。特に、コース選考をパスしてからは、お世話になった研究室の得意分野で半年間でできることをしなさいと指導していただいたことが、新たに「好気性脱窒菌」を利用することに繋がりました。

脱窒菌とは本来は嫌気性なのですか?

崎本 はい、そうです。好気性脱窒菌は硝酸から酸素を奪う反応を好気条件下で起こします。なぜ酸素があっても反応するのか?エサとして利用したものは?菌の濃度はどの程度?といった理学部に近いような疑問が次々に起こり、それらを基に実験しました。さらに、この好気性脱窒菌はなんと!嫌気性条件下でも反応を起こし、それは嫌気性脱窒菌よりもかなり高いレベルでの活性として期待できることがわかりました。

予期せぬ実験結果が出たのですね!

崎本 はい。とてもおもしろいと感じました。こうした過程を経ながらご指導いただくなかで、脱窒菌のDNA配列にまで考察が及びました。実は、この好気性脱窒菌、僕がお世話になった研究室で発見されたものだったんですよ。

そうして、昨年12月の学会発表にまで進んでいったと。

崎本 この研究を任せていただいたことがきっかけで、研究内容をポスターにまとめ、学会で発表させていただこうと思い立ちました。事前に8月には横浜で発表していましたが、12月の発表では高校生は僕だけで、他の参加者は大学院生や企業の研究者の方ばかりでした。

そして、崎本君のポスター発表がゴールドポスター賞に選ばれたのですね。

崎本 はい。賞をいただけるなどとは夢にも思っていなかったので、とてもうれしかったです。高校生なのによく知っているねと褒めていただきましたが、研究室の先生方をはじめ周りの方たちのおかげでした。

この経験を今後はどう活かしていきたいですか?

崎本 大学に進学すれば、とにかく自主的・積極的に動いていきたいですね。1回生の早いうちから動いて幅広く学び、得意分野を深めていきたいです。大学の卒業後はベンチャー企業もいいな、と考えています。

最後に、本校生に向けての一言をお願いします。

崎本 何かを学ぶ際には、とにかく積極的な姿勢が大事です。僕はSEEDSプログラムのディスカッションの際に進行役を買って出ましたが、それがあったから周りの人たちからも話しかけてもらえるようになりました。自分から動かないと何も学べない、人の繋がりも生まれない。このことを知ってほしいですね。

 1.世界最先端の科学技術にいち早く触れてみたいという意欲的な高校生向けのプログラムで、主に講義と阪大研究室での研究活動から構成。2015年より実施。SEEDSScience Engineering Enhanced Education for Distinguished Studentsの略。

2.2019年材料技術研究協会討論会。材料技術研究協会主催で20191256日、日本大学駿河台キャンパスで開催。研究者らによる各種講演やセッション等から成り、一般や学生が参加しての発表も実施。ゴールド・シルバーポスター賞は優秀なポスター発表者に贈られる賞。

研究テーマのタイトルは「好気性脱窒菌を用いた新規窒素除去法の提案」。学会発表に用いたポスター(左)と、発表時の様子(右)

 

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