医師・登山家 今井通子氏特別講演会

2016.10.14 学園通信

秋も深まり始めた10月8日(土)、医師で登山家の今井通子氏をお招きして特別講演会を開催しました。

今井氏は医師として活躍される一方で、欧州アルプス・マッターホルン北壁登攀(1967年、女性パーティ世界初)をはじめ女性では世界初の欧州三大北壁完登にご成功。以後も登山活動で数々の足跡を残され、現在も医学と登山の両面から得られた貴重なお話を講演・執筆等の活動を通じて意欲的に発信されています。

そんな今井氏が割れんばかりの拍手に迎えられ、登壇されたステージには「山からの贈り物 ~山と仕事と子育てと~」のテーマが。講演はまず「山」のお話から始まりました。

並び立つ世界の高峰に登頂された際の貴重なご体験談とスライド写真の数々を披露されるなかで、子どもの頃はともに医師だったご両親に健康のためにと夏山へ1カ月間連れて行かれ、晴れた休日にはハイキング、雨の休日になってようやく映画を観るような生活だったと回想。この幼少期の原体験から、その後登山に本格的に取り組むようになられました。

今でこそ登山が大ブームの日本ですが、元々「山」といえば一部の本格的な登山家が目指す場所という印象でした。それが、欧州では山岳地帯は疲弊した都市環境の対局に置かれるものとして、一見山に関係のなさそうな一般市民も気軽に登る場所となっています。そんな欧州と関わりの深い今井氏は「人間環境」と「自然環境」の相関性を軸に、登山から森林へ、さらにそれらが医学、子育てに与える影響を熱く語っていかれます。

人間へのさまざまなメリットがある森林は、人間環境を維持するうえでも保全と適正な利活用が必要なこと。週末に山暮らしされる今井氏の日に焼けた顔が患者さんを元気にすることから、山は人間の健康維持・増進や人間関係上の癒やしに役立つこと。二つと同じものがないことから、自然は人間の観察力や洞察力から危機管理能力(肯定的にものごとを見て発展的に解決する力)までの獲得にも役立つこと…。

これらの「山が教えてくれたこと」を科学的・医学的な視点から語られるなかで、子育てでの「親が子どもを認めること」の大切さや、子どもの人間性・能力の開発に親は「自然という場を与えてあげる」だけでよいこと等、本校生の保護者ら子を持つ方々にとても参考となるお話にも数多く触れられました。

他にも、森林の持つ機能や森林浴の楽しみ方等の話題が登場し、終わってみれば「森に何かをしに行く、ではなく、森に何かをされに行く」という森林セラピーの考え方が伝わる意義深い講演でした。

なお、この講演会は毎年三田学園育友会研修会として開かれてきたものですが、今年は一般の方にも聴講の門戸を本格的に開き、事前に三田市や新聞・ラジオ等の地元各メディアを通じて参加者を募ってきました。

おかげさまで、当日は育友会関係者約300名に加えて一般からも75名の方が来校され、今井氏のお話に耳を傾けられました。

ご参加いただいた一般の方々、本当にありがとうございました。併せて、募集告知で大変お世話になりました三田市および地元各メディアの皆様にもこの場を借りまして厚くお礼申し上げます。

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